漫画制作過程

1.プロット制作

まず、どのような漫画を描くかを決めます。商業の場合は、テーマを与えられる事が多いので、そのテーマに沿って考えていきます。

例えば、「近親相姦モノ」がテーマなら、人間関係から決めていく事が多いです。そこから、お話の流れを決めます。話はページ数にもよりますが、なるべく簡単な構成にするようにします。読み切りの場合はページ数が少ないので、複雑にすると後で構成するのに困りますし、読む方も複雑だとわかりにくいからです。

「両親が死んで、おじさんの家に引き取られる事になった少女が、従兄弟達に犯される。」といったカンジで簡単な文章で説明できる方がいいです。しかし、内容が暗いなぁ…。


2.ページ構成

話の流れがだいたい決まったら、その話をどう説明するかを決めなければいきません。まずどういうシーンが必要になるかを決めていきます。

まず、説明しなければいけない事は、「両親が死んだ。」、「おじさんの家に引き取られた。」、「従兄弟達が少女を犯す。」という事です。これらの事柄をどのようなエピソードで見せていくかを考えていきます。

「両親が死んだ。」という事柄を説明するなら、「葬式で少女が泣いている。」、「事故がニュースで流れる。」などいろいろ考える事ができます。今回は「少女が両親の写真を見て泣いている。」というシーンで説明する事にしました。どういうシーンにするかは、答えが無いので、自分が描きやすいシーンを選びます。時間がある時は、難しい絵にしようとか思うんですけど、なかなかそういう根性がありません。その他の要素もこういったカンジで考えていきます。

シーンがだいたい決まったら、シーンの順番を決めていきます。シーンの順番を変えるだけでも、漫画の印象は大きく変わってきます。カラーの漫画の場合は、カラーが最初に来るので、Hなシーンを最初に持っていきます。カラーのページは目立つようにしたほうが良いので、派手なシーンが最初にくるように構成していきます。今回はモノクロなので、「少女が引き取られたおじさんの家で酷い扱いを受けている。」というシーンを最初に持ってきました。これは、可哀想な少女が主人公の漫画だとわかってもらうのと、少女が酷い目にあっているという事を強調して、話の流れを読者に想像してもらいたいと思ったからです。

ページごとに描く要素を大雑把に簡単なメモで描いていきます。「1p=少女がおじさんと従兄弟に作った料理の文句を言われている。」、「2p=少女、死んだ両親の写真を見ながら泣いている。独白で現在の状況を説明。」といったカンジです。この段階では大雑把にしか決めません。ページ構成が多少ずれてもかまわないので、全体の流れがわかるように構成していきます。この時、なるべくシーンの大きな変化は左ページ(奇数ページ)にくるようにします。シーンの代わり目が右ページ(偶数ページ)にきた方が、ページをめくった時に変化がくるのでわかりやすいからです。


3.コマ割

下書きをする前に、ノートなどに大雑把にまるちょんでコンテを描く場合もありますが、最近は時間が無いので、そのまま下書きに入る場合が多いです。本当は簡単なコンテを作った方が試行錯誤しやすいので、いいと思います。なんと言ってもやり直しが簡単ですから。

コマを割る時は、先ほど作ったページ割りを見ながら、シーンをどういうコマで見せていくかを考えます。流れを順に追っていくカタチでコマを割る場合もありますが、重要なコマから先に作っていく場合も多いです。目立つコマを先に大きくしていく事で、読者にそのシーンがどういうシーンなのかを直感的にわかってもらいたいからです。セリフをきちんと読まなくても、ぱっと見たカンジで、そのシーンの印象が直感的にわかる事が重要です。もちろんセリフも重要なのですが、読者は最初に絵から物語に入っていくので、絵で話の印象をつけていくのは、読んでもらう為にも重要な事だと思っています。

絵とセリフを入れる時には、キャラクターのイメージを頭に描きながらしていきます。キャラクターのポーズやセリフで、そのキャラクターの性格が伝わります。特にポーズは直感的にキャラクターの性格が伝わるので、じっくり考えます。あとはセリフで伝えていきますが、なるべく絵で伝わるように心がけています。セリフで言わせた方がラクなんですけどね…。


4.編集チェック

下書きが入ったところで、FAXして編集さんから意見を聞きます。雑誌によっては大雑把なコンテを出してから下書きをする場合もあります。

編集者の方にチェックをしてもらうのは重要な事で、やはり第三者に客観的な視点で見た意見を聞く事で、読者に自分の描いた物がどういう印象で受け止められるかを知る事ができます。自分では、当然内容がわかるように表現しているつもりでも、第三者から見るとわかりにくいという事が多々あります。その辺をまずチェックしてもらいます。他にはお話の印象とかをチェックしてもらいます。オチが暗すぎるとか、この表現はキツイなどのチェックです。この辺は編集さんの好みとかにもよるんですが、雑誌の方向性とかもあるので、なるべく編集さんの意見を取り入れるようにしています。雑誌を買ってる人は、その雑誌にある種の期待をよせて買っている訳なので、なるべく期待に添いたいというのがあるからです。

チェックを受けた部分を修正して、仕上げ作業に入っていきます。


5.ペン入れ

下書きをした紙の上に別の紙を貼り、トレースします。トレースするのは、下書きの線を消すのが面倒だからです。トレース台はマクソンのトレーサーを使っています。サイズはA4の小さい方が好きです。以前、大きいトレス台を使っていたんですが、机を占有する面積がでかいので、やめました。原稿用紙もマクソンを使っています。

主線はグラフィックペンの0.1と0.2。枠線は0.8。その他の書き文字に0.3。後は細かい部分にHi-TecCの0.3とかを使っています。以前は、スクールペンとかを使っていたんですが、仕上げをコンピューターにしてからは、あまりこだわらなくなりました。取り込んだ時の調整で、線の印象が変わるのと、手を汚すのがイヤで…。

ベタ入れは筆ペンと油性マジックを使っています。筆ペンはかなりタッチが変わるので、いろいろ試しています。

修正は、修正ペンを使っています。細かい部分の修正はコンピューターで取り込んだ後に行います。その方が細かい修正ができて良いです。

この段階では背景は入れません。


6.線画取り込み

線画をスキャナーで取り込みます。スキャナーはエプソンのA3スキャナーを使っています。以前は、A4スキャナーで2分割で取り込んだものをつないでいましたが、やはりズレが出るので、できればA3スキャナーが良いと思います。取り込み設定は、グレースケールのB4サイズ、600dpiです。1200dpiだとより奇麗になるのですが、作業の事を考えると効率が悪いので、600dpiで取り込んでいます。

取り込んだ線画を、フォトショップのトーンカーブやコントラストで調整して、最後に2値化してモノクロ画像にします。なぜ2値化するかというと、グレーの部分が線に残っていると、残っているグレーの部分が網点となり、出力時に線が乱れるからです。データ入校する場合は、編集サイドで原稿をスキャニングする必要もありませんし、細かい網点で出力される場合は、グレースケールの線のままでもキレイにでます。この辺は画面の好みの問題だと思います。ただ、モノクロ2値化してある原稿の方が、選択範囲が取りやすく作業がしやすいです。鉛筆などのタッチが出せるグレースケールの線も個人的には好きです。鉛筆の方が線が生き生きして見えるので。


7.トーン作業

PhotoShopで線画に影や服の模様などをつけていきます。

線画の上に乗算レイヤーを作ります。これで、線に影響を及ぼす事無く、作業ができます。影はグレースケールでつけていきます。荒い網点などは、パワートーン3を使ってつけていきます。パワートーン3は模様も豊富に用意されているので、とても便利です。

トーンの削りにあたる表現は、エアブラシなどで表現していきます。かけ網をパワートーン3で張って、白のエアブラシや消しゴムツールのブラシで消せば近い感じになります。

影にノイズを入れると砂のトーンに近いカンジにもなります。荒い砂とかもパワートーン3に用意されていて重宝します。

グラデーションをかける時は、線レイヤーからパーツ単位で選択して、グラデーションツールでかけます。他にも投げ縄ツールで大雑把に囲み不要な部分を消してグラデーションをかける場合もあります。

エアブラシツールで、細かい表現もできます。


8.背景作成

背景を3Dソフトや写真を使って作ります。

3Dソフトは「Shade」、「LightWave」、「六角大王」、「インテリアデザイナー」、「マイホームデザイナー」などを使って作ります。他にも「コミックスタジオ」に背景を作る機能があるんですが、これがとても便利です。

背景を作る時は、俯瞰、あおり、水平と3つのアングルをロングの画像で作成しておきます。解像度をできるだけ高くしておくと、部分的に使えて、使い回しがききます。他にも必要な小道具なども漫画の内容に応じて用意しておきます。沢山用意する方が変化を出す事ができて便利ですが、レンダリングで時間がかかるので、ある程度搾っていく事も需要です。

他にも著作権フリーの背景集とかも使います。多くの作家さんがつかっているので、ちょっと背景かぶっちゃうのが難点です。

あとは、写真をデジカメで撮ってくる場合もありますが、出不精なので、あまりしません。3Dで作りにくいものには便利ではあります。


9.最終仕上げ

先ほど用意した背景を合成していきます。絵に合わせて、サイズを調整し、PhotoShopのフィルター「エッジのポスタリゼーション」で、線を強調して、漫画に近づけます。最後にコントラストを調整するとより漫画っぽくなります。これも単なる好みだと思うので、自由にやっていいんじゃないかと。

小道具などが人物に被る場合は、別レイヤーにペーストして、人物に重なる余分な部分を消しゴムツールで消していきます。

細かい修正もこの段階でやります。キャラと被ってわかりづらい部分を白抜きしたりします。

効果線をパワートーンやコミックツールズでつけていきます。効果線もいろいろ設定できるので良いです。集中線ツールは、ウニ吹き出しも作れるので、ウニ吹き出しがある場合は、この段階でつけていきます。

書き文字用のレイヤーを用意して、書き文字を加えます。書き文字を「透明部分の選択」を使ってまとめて選択し、「境界線を書く」で白フチをつけます。


10.出力

データ入校の場合は必要ありませんが、出力原稿を納める場合は、レーザープリンターで出力します。

レーザープリンターはエプソンのLP-8100を使っています。100baseT接続なので、出力が速くていいです。

設定は、荒めの網点で出るようにします。エプソンのプリンターでは網点をスムージングしてくれるので、かなり奇麗に網点がでます。あと、線もスムージングされます。

最後に原稿にさらに書き加えて完成です。